映画「悪人」が伝える「愛」と「善悪」

心がえぐられる映画ですね。
素晴らしいです。

人を愛してますか?
自分を愛してますか?

この問いの先に、この映画の答えがあるのではないでしょうか。

「湯を沸かすほどの熱い愛」の真逆を描いていると思います。
そして、しっかりと描かれています。

icco

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まだみてない。

お杉

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灯台のシーンは落ちそうな感じがあって、別のドキドキ感。

テーマは「愛」

映画では、テーマを「孤独」に持ってきています。しかしながら、私は、「愛」がテーマだと思います。

冒頭に述べた通り「人を愛すること」と「自分を愛すること」の先に「人から愛され」「自分を愛す」ことができると思うからです。

愛とは無償のものではないです。

人は自分が人から愛されて初めて、自分が人を愛することができます。そして、その愛せる程度は人それぞれ。

しかし、人を愛することで、自分を愛すことで、人から愛され、幸福になると思えれば、その努力をする、努力をしたいと思います。

人のもつ「善」と「悪」

例えば、儒教の「性善説」と「性悪説」があります。それは「人は生まれ持って善(又は悪)である」という考えです。しかし、これは一方向の考え方。
※厳密に言えば「努力していい方向に!」という意味ですが、決めつけとして紹介してます。

人はそんなに単純ではないです。

生まれ持った違いがあれば、性格も、他人に対する感情の持ち方もバラバラです。「本来備えている性格」と「環境によって形成される性格」とは、違うものと捉えます。

一人っ子と兄弟がいる場合、また、長男長女と末っ子など環境によって性格の形成が変わります。お金持ちの方と経済的に苦しい家庭に育った方や国、宗教、文化にも影響を受けます。

そして、同じ人間であっても、時や場所、状況によって、性格が変わってきます。いいことがあった時、辛いことがあった時、イライラした時。

つまり、人間の性格とは、

核に
「生まれ持ったもの」

その周りに
「育った環境によって培われたもの」

そして、
「今の状況によって生み出されるもの」

と、性格は中心から円周のように外側に向かってこれらの順で形成されます。

総合的に人間を考えると、性格は、

「人間は善も悪も、もれなく持ち合わせ、そして、それらは、縁によって生ずる」

と言えると思います。

人から尊敬を集める人でも、正義の怒りを持つこともあれば、犯罪者や極悪人と言われる人間でも、大切な人には笑顔になったりします。
※正義の怒りとは、例えば、権力者の不正を暴こうとする正義感だが、それ自体は権力者に対する怒りを持っていること。正義感は「善」だが、怒りそれ自体は「悪」である。
極悪人と言われるような、例えば、オレオレ詐欺をするような人でも、そのお金で自分の子供の生活費を稼ぎ、養う。オレオレ詐欺は「悪」だが、子供を育てることは「善」である。

全ては、縁に応じて、そして、善と悪の程度の差があり、生ずるのです。

「人を愛すること」が幸せの素

では、いかによりよく「善」でいるか。「善」を保てるか。ここが人生におけるポイントではないでしょうか。

常に、ずっと、何があっても、「善でいる」ことは難しいと思います。
なかなかできることでもないですし、そうであるなら人間味がないようにも感じます。

しかし、できる限り「善」でいたい。

ハッピーに楽しく、笑って、悩みなく生きたい。怒ったり、嫉妬したり、誰かを蹴落としたりすることなく生きたい。そう思うのではないでしょうか。

その一番のポイントは「人を愛すること」です。

これはキリストの言うような簡単な「愛」ではなく、寄り添い、育て、こちらが苦しむことです。それをする事で「自分を愛すること」ができ、「人に愛されること」ができます。

「悪人」からみる「愛」と「善悪」

映画では、それらを伝えていると思います。

登場人物は皆、上記のような「善」と「悪」をそれぞれ抱えて、縁に応じて生じさせています。

主人公の祐一は、一面を見ると「善」です。そして、他方を見ると「悪」です。

善としては、祖父母や地域の高齢者の世話をすることや光代を愛します。また、仕事もちゃんと行きます。

光代は、祐一を愛し、励まし、尽くします。妹にとってもいい姉です。しかし、犯罪者を囲い、守ります。仕事はしっかりと行います。

圭吾は善の部分がありません。女たらしの無慈悲なやつとして描かれています。しかし、友人の鶴田を善として描いています。鶴田は佳乃の父を助けたり、圭吾を否定したりします。

佳乃は、祐一を蔑みます。父を仕事のために利用したり、友人にも心を開いていません。その反面、父は、口が悪く、母に当たったり、刑事に当たったりしますが、娘の最大の味方でいようとします。

祐一の祖母は祐一を信じ、強く耐え、待ちます。そして、騙されて取られたお金を取り返すほど強くなったりします。しかし、出て行った母には厳しく当たります。

全てではないですが、これらからもわかるように、登場人物は善と悪を同時に持ち合わせていると言えます。そして、縁に応じて、「善」が生じたり「悪」が生じたりしています。つまり、一人の人間の中に「善」も「悪」もあるという事です。

この手の映画を観ると「なんでそんなことしたのか、ばかばか、ちょっと待て、絶対に危ないから」という気持ちになりますが、そういう見方では、人生において学べることが少ないと思います。人は「善」と「悪」を両方持ち合わせているんだということがわかればいいと思います。

そして、自分自身を客観的に「あ、今、自分の悪が出てる」と思えれば、十分価値あるものになります。

人を愛することについて「寄り添い、育て、こちらが苦しむこと」と書きました。
美輪明宏さんが「愛の反対は憎悪ではなく、無関心」(主旨)とおっしゃってました。
そして「恋は、相手に求め、愛とは何も求めないこと」(主旨)ともおっしゃってました。
正しいなと思います。

世の中で一番の愛は、母親の愛情だと思います。これは一般論です。映画のように、祐一は母には育てられておらず、祖母が母代わりでした。現実にもそのような方ももっとひどい状況の方もいらっしゃると思います。

しかしながら、一番の愛は「母の子に対する愛」です。それを「湯を沸かすほどの熱い愛」では描かれており、その反対がこの映画で描かれています。

そちらの記事でも書きましたが、子供は、愛されることを知らないと、人を愛することができません。そして、自分を愛せなくなります。

祐一は愛を知らないが故に、佳乃を殺し、愛を知ったから、光代と一緒にいることが辛くなりました。そして、最後に犯行後の余罪を全て自分一人で被ります。光代は祐一に愛されることで、自分を認めることができました。

どこかのタイミングで人を愛さなければ、人を愛することも、愛されることも、自分を愛すこともできません。でも、愛せない人は、愛し方がわからないから仕方がありません。
これだけの考えであれば、負の連鎖に陥るしかありません。冒頭に性善説と性悪説を冒頭に紹介したのは、ここに帰結します。

嘘でもいいんです。偽りでもいいんです。実際に愛していなくてもいい。でも、人を愛せば、人に愛され、自分を愛することができます。そして、孤独ではなくなり、幸福感を手に入れられます。

愛された側は、「愛している」ことが「嘘」だとわからなければ「愛されていること」が「嘘」だとは思いません。そして、「愛された」という「嘘」は、絶対に人を傷つけません。

無理やりにでも愛する努力をすれば、人を愛することができます。そして、その作業は「苦しい」んです。

だから、人を愛することは「寄り添い、育て、苦しむこと」と申し上げました。

愛されたことがある方は、その自分が受けた「愛」に感謝し、他者に「愛」を還元しましょう。
愛されたことがない方は、嘘でもいいので、人を愛しましょう。これが幸せになる一番の近道だと私は思っています。

素晴らしい役者とカメラワーク

映画の中で言えば、全役者の演技が素晴らしいです。
もちろん主役の二人も素晴らしい。
でも、脇役がとにかくすごいです。
そして、カメラワークが最高だと思います。

妻夫木君は、第34回日本アカデミー賞での最優秀主演男優賞を獲得。
その際のインタビューでは泣きながら「全身全霊で挑んだ作品です。一時は個性がないと言われて、自分とは何なのかと悩みましたが、この作品では自分を信じてやりました」と語ってました。
確かにこれまでの好青年のイメージとは一新した感じもあり、全体を通して、素晴らしい演技だったと思います。
深津絵里さんも最優秀主演女優賞を獲得。綺麗なのに幸が薄い。「こういう人いそー」をしっかりと演じています。そして、愛せる人柄を演じる力はすごいです。
先日亡くなられた樹木希林さんが助演女優賞を受賞。背中で語る演技は素晴らしいです。どこか憎めないんですよね。
柄本明さんが助演男優賞を受賞。こちらも素晴らしい演技です。田舎の頑固親父を演じてます。葬儀のシーンで警察にぶつかるところの切り替えなど、本当に素晴らしいです。
満島ひかりも良かったですね。わがままな雰囲気が出てます。そして、幽霊として、父を対するときの笑顔は、最高だと思いました。

そして、カメラワークですが、冒頭の佳乃が殺され、死体の確認に行った父と母。
待っている母に告げる父との2ショットが影になってます。
こんな演出の仕方。ずるいですよね。

祐一が佳乃に殺人を告白するシーンでのカットバックが顔半分しか写ってないんです。
緊張感が煽られます。そして、店員さんが来て、緊張の糸が一気にほぐれ、また緊張に入ります。
すごいです。

※カットバックとは、二人以上で話しているときに、面と向かっているため、両方の正面の顔は撮影できないので、カットを割って、両方の顔を交互に写す手法。人物のみならず、建物などと相対した時にも使用したりする。頻出手法の一つ。

全体を通して、真上からのカットが多いですよね。サスペンスではよく使われます。そして、背中で語るシーンも多い印象です。映画の中に吸い込まれる要素の一つだと思います。
主観と客観をうまく、タイミングよく、効果的に使い分けていて素晴らしいです。

最後に

この「悪人」は本当に素晴らしいと思います。こういう作品が世の中にたくさん溢れてくれることを祈るばかりです。原作ものでもいいんです。原作ありきでもいいから、映画だけで、感動させることができ、映画だけで、引き込むことができることが、重要ではないでしょうか。本当に素晴らしいです。

監督 李相日
脚本 吉田修一
李相日
原作 吉田修一
製作 島谷能成
服部洋
町田智子
北川直樹
宮路敬久
堀義貴
畠中達郎
喜多埜裕明
大宮敏靖
宇留間和基
音楽 久石譲
主題歌 福原美穂「Your Story」
撮影 笠松則通
編集 今井剛
出演者
妻夫木聡
深津絵里
岡田将生
満島ひかり
塩見三省
池内万作
光石研
余貴美子
井川比佐志
松尾スズキ
山田キヌヲ
韓英恵
中村絢香
宮崎美子
永山絢斗
樹木希林
柄本明
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お杉

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