日本屈指のインストバンドtoeによる初の歌もの。ライブDVDも必見。

toe 『new sentimentality e.p.』
あらすじ
日本屈指のインストゥルメンタルバンドtoeによる初の歌もの収録の作品。
新世代のセンチメンタリズムで年越しを。
作品データ
製作年
2006/12/06
収録時間
20分42秒
レーベル 
Machu Picchu Industrias 

 

日本屈指のインストバンド

山嵜廣和(ギター)美濃隆章(ギター)山根敏史(ベース)柏倉隆史(ドラム)の4人から成るインストゥルメンタルバンドのtoe。
メンバーそれぞれに別の職業を持つ。山嵜氏は空間デザイナー、美濃氏はレコーディングエンジニア、山根氏はアパレル関係のアジアマネージャー、
そしてドラムの柏倉は木村カエラのサポートメンバーや元ELLEGARDENの細美武士率いるthe HIATUSのメンバーも兼ねている。
その全てのメンバーが持つセンスの融合により、いまや日本屈指のバンドである。

インストゥルメンタルといえば当然歌はなく楽器の演奏だけで構成された曲の事を指し、さらにtoeはそのインストゥルメンタルバンドの最高峰のひとつである。
ただし、そんな日本屈指のインストゥルメンタルバンドであるtoeだが、今回紹介する『new sentimentality e.p.』については例外である。

toeというバンドについて

まず、toeというバンドの最大の特徴としてライブのパフォーマンスが挙げられる。
ステージがフロア中央にあり、バリケードで円状に囲まれた中に全員が向かい合っているような状態で演奏が繰り広げらる。
その空間の効果か、一体感が凄まじい。そのライブは演者と客といった限定的なものではなく会場内の空気まで連結して膨張していくような
なんともいえない興奮がある。機会がある方は是非一度見てもらいたい。
また、ライブDVDが出ているのでそちらでじっくり見てみるのもいいだろう。(筆者は過去その異常な一体感にやられて覚えていないほど踊り狂ったことがある。)
そして、音の特徴としてはドラムが歌っているということが挙げられる。
これは所謂ボーカルということではなく、バンド全体の役割的にボーカル的要素をもっているということである。
尋常ではない手数の多さに加え、リズムが変拍子。かつ絶妙なタイミングとフィーリング。
それはまさにその他の楽器より明らかに音階の少ない打楽器であるドラムという本来はリズムをつくる楽器の枠を飛び越えて
もはやメロディーを叩いているように聴こえる。
そこにリズミカルでメロディアスな2本のギターの音色が交錯し、ベースが全体を纏め上げているといったような、所謂ポストロック(楽器本来の役割とは違う使い方がされているような音楽)と呼ばれる音楽に仕上がっている。

インストバンドだからこその歌もの

以上が基本形態であるが、今作に限っては実際に山嵜氏がボーカルをとる曲が収録されている。
その曲名は「グッドバイ」。
この「グッドバイ」にこそtoeというバンドの全てが集約されているかのように感じる。
それはついに禁を破ったような、しかし誰もが待ち望んでいた曲ではないだろうか。

7分34のその一曲はまさに朝の7分34を切り取ったような印象を持つ。
深く沈んだ意識のそこへゆっくりと陽の光や朝の匂い、外の騒がしさが一日の始まりの合図となり、
これから行われる現実世界と、既に泡となってはじけてしまった夢の世界を行き来しているような。
そんな朝の感覚が詰まっている。
まだ寝たくて、でも起きなくてはいけなくて…
日常のやり場のなさが現実なのか夢なのか虚ろになっていく。
やがては鳥の声にそんな朝にも終わりを迎える。
はたしてそれは現実なのか夢だったのか。

新しい感性をもって新年を

人生は一度きりである。そんなことは言われなくてもわかっていると突っ込まれそうではあるが、
それなら夢のように生きても、現実的に生きても構わないと思う。
そこに境がなくても己が決めていけばいいことではないだろうか。
やはり、そんなことは言われなくてもわかっていると突っ込まれそうだ…

そんな人生、こんな音楽をおともに歩いてみるのもいいかもしれない。
ちなみに筆者は一年の全てにグッドバイするために年をまたぎながら「グッドバイ」を聞いている。
年末年始に時間がある方はただ流れているだけのテレビより、DVDを。
正月からゆっくりライブDVDなんて素敵ではないだろうか。

そんな『new sentimentality e.p.』
新しい感傷性の先には新しい感性が見えるのかもしれない。
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